2018.8/10~

   耳なし芳一(DANCE篇)
   
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町を歩いていたらこんなチラシを配っている外人が居た。          
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(アルバイト募集)
募集人数 1名
職種:筆で人体に経文と図を書く仕事
資格:20才男性 身元のしっかりした人 秘密を守れる人
超高給優遇  

君は Yakumo koiz
umi の「耳なし芳一」の話を知っているか?
知っていると話が早い       
知らなければ ここをクリック
参考文献
 耳なし芳一の話 青空文庫
The story of mimi-nashi-hoich 小泉八雲 Lafcadio Hearn 戸川明三訳

以上委細面談        

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耳なし芳一は、昔、祖母から聞かされたことのある物語だ。
細部まで詳しく覚えているわけでは無いが、芳一のような素晴らしい才能を持った人が窮地に陥っているということか。
その人の身体に経文を書けば良いのか。

興味をそそられた。


..........(数日後)

 ぼくは採用されて、現地にやってきている。チラシにあった通り、信じられないほどの高給優遇だ。住む部屋も食事も豪華なものだ。
 人生、何が役に立つのかわからない。採用の決め手は、ぼくがインポテンツ(ED)だから、というのだから。
 BOSSから聞いた話では、ぼくはどうやら狙いをつけられていたらしい。チラシは皆に同じものを配っていたのでは無く、ぼくがもらったチラシはぼくだけに渡されたもので、チラシにあった「20才男性」という条件はぼくが20才だったからだそうだ。
 ぼくは死んだ両親が残していった家に一人で暮らしている。ぼくは一人っ子で、大学のサークルなどにも属しておらず、姿を消しても不審がって警察に捜索願を出すような友人も居ない。
 「窮地に陥っている素晴らしい才能を持った人」は日本人男性で、日本ではかなり有名な人物だとの事だが、世間に超疎い自分は実際に‘その人’の映像を見せられたときも、どういう人物なのかが全くわからなかった。
 ぼくのそんなところも、BOSSたちに注目されていたらしい。

 この仕事に直接関わっているのは、白人のBOSS、黒人のTonyと呼ばれている助手、そしてもう一人の助手のぼくの三人だ。BOSSもTonyも大柄のムキムキ体格で、ぼくよりも一回り大きい。もちろん彼ら二人もEDだ。この仕事は、EDじゃ無いと務まらないよ、EDだとしてもゲイのウケの男も務まらないな、もちろん女は論外だが、レズビアンならいけるかも知れない、とBOSSは言っていた。
 他には、コック、掃除をする人、運転手などの使用人が居るが、会話はまだしたことが無い。BOSSはここのオーナーでは無いそうで、この施設はどこかの会社が所有しているものらしい。

 ここの場所がどこなのかは極秘事項だとのことで、聞いても教えてもらえない。
 ぼくは睡眠薬かなんかを飲まされて意識を失っている間にここに連れてこられた。スマホも取り上げられた。
 たぶん人里離れた森(or林?)の中にある広大な敷地の中の、地下室付き三階建くらいの建物にぼくは居る。
 ここにはぼく以外の日本人が居ないこと、全員、英語で会話していることから、どこか外国に来ているんじゃ無いかと思う。季節は夏だ。ということは南半球は無い。東京よりも少し涼しく感じるので赤道付近もあり得ない。窓から見える景色は、ここの敷地と遠くの樹木だけで、街並みどころか他の建物すら見えないので、場所の特定に役立つようなヒントは何も無い。樹木に詳しい人なら樹木でもっと絞り込めるのだろうが。
 もちろん、ここにはTVや新聞も置かれていない。よそから人がやってくることも無い。

 BOSSは30~40代の白人で日本文化通だ。Tonyはぼくと同じくらいの年齢の黒人青年で空手を習っている。BOSSは日本語をかなり理解するし、Tonyは片言でなら少し日本語を話せる。

 ぼくの仕事の初日は、まず映像を見ることだった。BOSSは挨拶をするとすぐに‘その人’の様子を見に行くために中座したので、ぼくは助手のTonyから説明を受けた。これはBLディスクに入った映像だが、不思議な事に、関係者の誰もこんな撮影はしていないと言う。ディスク自体はBOSSが買ってきてデッキに入れておいたのと同じものらしいが、BOSSもこんなものが焼かれていたのを知らなかったらしい、とTonyは言う。

 それは‘その人’の舞踊の練習の映像だった。テニスコートより大きくサッカーコートより小さい、殺風景な板敷きのホールのような場所で‘その人’が日本舞踊のような能のような、創作舞踊のような踊り(いい加減過ぎる言い方だが、こういう分野に知識の無い自分にはそれしか言いようが無い)を踊っている。
 初めて見る‘その人’が自分より少し年上程度の青年だったのはぼくには意外だった。普通のジャージの練習着を着用しているのに足元は白足袋なのがとてもチグハグだが、静かな動きなのにキレがあり、集中しきった緊張感は本番さながらの演技のように思えた。だんだんと動きが激しくなり集中度も増していっているようで、いつの間にかぼくは‘その人’がジャージを着ていることを忘れ、それなりの装束をつけて踊っているような錯覚に陥っていた。

 「ここでちょっとストップするよ、画面の右上の部分を見て」
と言ってTonyが静止画にすると、そこには子供の人形のようなものが薄く映っていた。
 「日本人形だと思うけど、何の人形だかわかる?」
とTonyが聞いてくるが、ぼくには全くわからない。
 「日本人形の事なんて、ほとんど何の知識も無いよ。スマホがあればなあ、あたりをつけて調べられるのに。髪は長いけどこれは男の子だね。ぼくの乏しい知識からだと、ひな人形の五人囃子が一番近いのかな」
 「愛らしい顔してるよね、ちょっと踊り手にも似ているな・・まあいい。先を進めよう。これから先は怖いよ」
とTonyは言う。

 Tonyの言うとおり、怖い映像だった。‘その人’がスッと引きあげられたように空中に浮かんだのだ。‘その人’はそのまま驚きもせずに粛々と舞い続ける。そして映像にはギャラリーなど誰一人映っていないのに、ホールのあちこちから大勢の男女のすすり泣く声が聞こえてきた。さっきの日本人形の映像が次第に濃くはっきり姿を現す。そして日本人形は表情を持った。人形も泣いていた。
 動きがさらに激しくなり、表情がどんどん鬼気迫る。‘その人’はホールの空中をあり得ない速度でスーーッ、スーーッと飛び、あちこちで技を繰り出す。そして舞いはクライマックスを迎えた。最後のポーズを決めると‘その人’は力尽きたように崩れ落ち、うつぶせで空中を浮遊した。

 人形が喋った。姿は少年なのに、その声は老人のようなしゃがれ声だった。
 『ありがとう。すさまじいほどの悲痛な舞いであった。そして何と美しかったことか。わたしはこのようなものを初めて見た。そなたは地上の誰よりも美しい。褒美をとらす。近くにおいで』
 人形がそう言うと、うつぶせに倒れたままの‘その人’の身体が人形と同じ高さまでスーッと浮き上がる。
 『金銀財宝を与えてもそなたはさほど喜ばないであろう。そなたには、地上では味わえない天上の愉悦を、褒美として与える』

 言い終わったとたん、少年の人形は画面から消えた。

 「身体の角度をみてごらん、彼は誰かに抱かれているんだよ」
とTonyは言う。確かに‘その人’の上体は、何者かの身体にもたれかかるような形で浮かんでいる。
 「ぼくたちには見えない亡者に抱かれているんだな・・あの人形なのか?」
 亡者の手がまさぐっているのか‘その人’のジャージの中がごそごそ動く。‘その人’はまだ気絶したままなのか、亡者の手に身を委ねたままぐったりしている。ジャージがめくれあがった。胸も背中も何者かに弄られ動かされているのがわかる。映像は‘その人’の顔のアップに切り替わる。身体だけが反応してしまっているのかも知れない。半開きの唇が喘ぐようにかすかに動いている。
 「カメラワークが凝ってるよね。横から顎、頬の線、正面から喉仏、唇と舐めるように何度もしつこく撮ってる。カメラマンはエロな人だね」とTonyが言う。

 さっきの人形の声が聞こえてきた。姿は消えたが、そこに居たのだ。
 『どうだ?心地良いか?声を出して良いのだぞ。遠慮は無用だ』
 ‘その人’の小さなbtkがアップになる。見えない誰かが摘まんでいるのは間違い無い。btkが伸びたり縮んだり転がされたりしている。
 腹のあたりがぴくっと動いた。‘その人’が気付いたらしい。
 「・あ・・・お・・お館様・・そんな・・おやめください・・あっあっあっ」
 「はははは。やめないぞ。そなたも本心は心地良いのであろう。どれ?」
 ジャージの下側も動いた。
 「・・本当におゆるしください・・お見苦しいものをお館様にお見せしてしまうことになります。見苦しい素の姿を晒さぬようにと日夜精進してきた私です・・あっ・・こ・・このようなおたわむれは・・あっ、あーっ、いけません・・あーーーっ」
 『全く見苦しいところなど無いぞ。今のそなたは実に美しい。舞っているときよりもなお美しいくらいだ。もっと泣きなさい。そなたの清らかさを私は良くわかっているよ。丸裸の心で私に身を委ねなさい。そうすればそなたの舞はもっと美しくなる』
 ジャージの下側もせわしなく動き始めた。ぽ側も尻側ももぞもぞと動いている。

 「あの少年の人形がお館様なのか・・でもいじっているのはお館様一人だけじゃ無いね。たくさんの手が動いている。いったい何人でいじっているんだろう?」
 とぼくが聞くと、Tonyは
 「わからん、化け物だから一人でたくさんの手を持っているのかも知れないし」
 と言う。



 ‘その人’は化け物の手から逃れようとするかのように叫び声をあげながら、水泳のドルフィンキックのように空中で全身をくねらせる。しかしどんなに身をくねらせても化け物の手は振り落とせない。人形の声が聞こえる。
 『おっと、そんな動きをすると、空中で泳いでしまうことになるんだよ、ほら』
 言い終わるまもなく‘その人’の身体が空中をスーーッと移動する。
 『そうね、泳ぎ回りながらよがるのを見るのも良いものだね。ははは、どうだ?地上では味わえない快感を味わい始めているのでは無いかな?』

 ギャラリーたちのどよめきが聞こえる。ぼくは思わず後ろを振り向いた。ここのオーディオはサラウンドシステムでは無いのに、ホールを360度囲む位置から声が聞こえてくるような気がしたのだ。
‘その人’は身をよじり、のたうちまわる。身をよじるたびに方向が変わり、ホール中を浮遊する。‘その人’が近づいたギャラリー席から歓声が沸き上がり、歓声がウェイブのようにあちらに飛んだりこちらに飛んだりする。
 「あーーーーっ」と絶望的な声をあげて‘その人’は再び気を失った。動力を失い、惰性でしばらく移動した後、‘その人’の動きが止まった。ジャージの下は化け物の手で揉まれ続けていた。

 『目が回ってしまったんだね。少し静かに楽しもうか』
 瞬時に衣類と白足袋がホールの床にはらりと落ちて、‘その人’の裸体があらわになった。ぽは完全に勃起していた。‘その人’はそのまま透明のターンテーブル乗ったように、ゆっくり、ゆっくりとホール中を回される。‘その人’が近づいた所にギャラリーたちのざわめき、どよめきが沸き上がる。ギャラリーとの間には少し距離があるのか、ギャラリーが身体に触れている様子は無い。そのままゆっくりと高さや体位を変えながら、五周ほど回されたろうか、人形の声が聞こえた。
 『なんと真っ白で清らかな裸体なのだろうね。ぽまでも美しい。この姿でもういちど舞ってもらおう。気を失ったままだが大丈夫。わたしが舞わせてあげるから』
 
 ‘その人’が舞ったのは、はじめの舞とは全く違う質のものだった。操り人形のような・・それも文楽のような洗練された動きでは無く、素人が操るマリオネットのような、糸で操るカクカクした動き。そして、無雑作に高く持ち上げられたり、床に落とされたりする。動かされるたびに、重力と遠心力とで‘その人’の四肢と ぽ がだらんだらんと揺すられる。動きがだんだん激しくなり、首までがくんがくんと振り回され、各コーナーでさまざまな卑猥なポーズをとらされる。
 はじめの舞と構成こそ酷似しているが、舞踏やダンスと無縁のぼくにも、これは明らかに興味本位のもので、美の鑑賞とは対極の悪趣味なものだということはわかった。はじめの‘その人’の意志を持った舞の完成度と比べ‘その人’が‘お館様’と呼ぶ人形の少年が踊らせるこの踊りのなんと低俗なことか。これは、意志を失った裸体を死体のように踊らせて、支配者が被支配者の滑稽感を味わおうとしているだけのものだ。‘この人’がこんな踊りを踊らせられるのは本当に気の毒だ、とぼくは思った。
 それにもかかわらず、ギャラリーからすすり泣く大勢の男女の声がまた聞こえてくる。亡者たちはこんな踊りで泣けるものなのか?亡者たちの不可解な反応を最大限に善解しようとすると、なにか亡者たちの泣くツボがある演目なのかも知れない。長いストーリーの舞踊の中に、今の‘この人’のように屈辱的な目に会った人の話の一幕があるということならばこれもありなのかも知れない、とも思う。しかしいずれにしてもこの部分を見る限り、ぼくには低俗なナンセンスにしか見えない。

 ‘その人’が舞い終わった時、いや、踊らせられ終わったとき、ホール全体に大勢の喝采と賞賛の拍手が鳴り響いた。
 『本当に美しかった。私はまた来ます。さらに精進して美しい舞を見せて下さい』
 人形が言うと、亡者たちは三々五々、立ち去って行った。力尽き、ぐったりと脱力した‘その人’の身体は地上に降ろされ、無人のホールの中央にうち捨てられた。
 ‘その人’は微笑みをたたえていた。



 急に、Tonyが鋭い叫び声をあげ、ほとんど静止画のように動きの無い画面の隅を指さす。Tonyの指が小刻みに震えている。
 「・・・これは・・・今初めて見る映像だ・・・どうしてこんなことが・・」
 そこには・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・ NEW  

a.html へのリンク (物語A)

b.html へのリンク (物語B)

c.html へのリンク (物語C)

(ここで物語を分岐させてみました。

また、どれかに続けて書いて下さる方も募集しています。
上記A.B.C以外の選択肢を作って続けて書いて下さる方も募集しています。
https://phoebe.bbspink.com/test/read.cgi/meow/1529000147/
に書き込んでみて下さい。自分はHPテクが低いので、
このHPから直接書き込み出来るBBS等は作っていません)

  



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